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読響の第九

読売日本交響楽団の第九の演奏会を聴いてきました。
久しぶりだな~、生で第九聴くの。
「年末=第九」みたいな図式が確立されつつあった頃から逆に嫌気が差して、しばらくご無沙汰でしたが、自分で第九歌うことになったので、知り合いに頼んでチケット取ってもらいました。
昨日の指揮はスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ氏という方だったのですが、なかなか個性的な曲の作り方をされる方だなーと思いました。2楽章がすごくテンポが速い!バイオリンの方が三連符のボウイングをダウンアップアップで弾いていたけど、アレって結構難しいんじゃないのかな。全楽章通じてなんとなく「タメ」とか「間」とかを作らない、流れるような曲の作り方だったように思います。

ところで、合唱は1楽章の頭から舞台にいるんだけど(狭そうで気の毒でした(^^ゞ)、ソリストはフツーは3楽章の前に出てくるんだけど、出てこないで3楽章が始まってしまった。ああそうか、4楽章始まる前に出てきて、4楽章だけ独立した雰囲気でやるのかな?と思っていたら、3楽章から4楽章へアタッカ(休みなし)で入ってしまった!「え?Σ(゚д゚lll)」と思った私は、頭の中で楽譜を早回しして、「あとどこで入れるところがあったっけ?」と心配してしまいましたが、トランペットが歓喜の主題を奏でる所でそれを伴奏に入場されました。(正直ホッとした(^^ゞ)
それで、ソリストが席についてまもなくバリトンのソロが始まるんですが、バリトンの方が「getter」を「ゲッター」と発音されたので「うぉ!(@。@;)」とまず思い、その後「Zauber」が「チャオバー」に聞こえた所でまた「うおー(@o@;)」と思ってしまいました。(^^ゞ日本人の歌うドイツ語はやっぱり変だ。
合唱は、もう少しアルトが聞こえると思っていたんですが、合唱全体に混ざってというかうまく溶け込んでというか、アルトだけ聞こえるところは少なかったです。まあ合唱としてはそれで良いのかな。
ティンパニもかっこよかったので、まあ良い演奏会でした。
終演後、知り合いの団員の人に会いに行ったのですが、今年は第九のコンサートの売れ行きが良くて、なかなかチケット取れないそうですよ。景気も回復しつつあるのかな。



昨日の演奏会でもらったパンフの中で、塚田れい子氏が書かれた「『第九』コンサート」という記事で「フーン」と思うところがいくつかありました。

まず、「(ベートーベンが)ほとんど耳の聞こえない状態でこの曲を作曲したこと」について。
ベートーベンが晩年聴力を失ったことは有名なエピソードですが、初演が終わった時、聴衆の喝采が聞こえずに、歌手の一人が彼を振り向かせて観客の熱狂振りを見せてあげたというエピソードがあったそうです。
また、ベートーベンより7歳年下のシュポーアという作曲家は、「聴力の著しく衰えた晩年のベートーヴェンは、独創的であろうとする意図から生じた音楽上のミスを、以前のように耳で修正する事ができなくなっていたのではないか」と日記に書かれていたそうです。
そういえば第九の歌の練習に行った時に先生が、「この曲は音がメチャクチャでね、歌手や合唱からは最初すごいブーイングだったんですよ」というお話をされていらっしゃいましたが、その理由が「耳が聞こえなかったこと」によるものだとしたらちょっと納得がいきました。

もう一つ、記事でフーンと思ったことは、第九の4楽章のいわゆる「歓喜の主題」は明るく朗らかなメロディーで誰にも親しみやすいメロディーであるのに対して、3つの前の楽章とかなり逸脱た雰囲気である、ということ。そしてその理由を説明するのに鍵になるのが、バリトンのソロの冒頭の歌詞であるということでした。
「O Freunde,nichit diese Töne!
Sondern laßt uns angenehmere anstimmen,
und freudenvollere.」
で始まるバリトンのソロですが、この部分だけベートーベンが付け加えた詩であり、「おお、友よ、この調べではなく」の「調べ=Töne」が前の3つの楽章を指すものではないか、そして「(このような調べではなく)もっと楽しい、歓喜あふれる歌をともに歌おう」という前3つの楽章の「否定」の上に曲調の違う4楽章があるのではないか、という物でした。
さらに、塚田氏はこのような「自らの作ったものを自らで否定する」という「演出」を「捨て身の、一世一代のしたたかな演出」と書かれています。この辺の壮大さが世に稀な大傑作となっているのだなーと思いました。

今までオケで第九は何度もやったのですが、こんなに深い考察をしたことはなかったので、この曲の奥深さを更に知りました。


どうでもいい追加。(^^ゞ
この演奏会、息子と一緒に行ったんです。息子は初めて生の第九を聴いたんですが、結構良い印象を持ってくれたようです。
コンサートに行く前にレストランで一緒に食事したんですが、もう次は無いかな。(^^ゞ
「最後のデート」だったかな・・・。(´・ω・`) ショボーン
by AppleTeaKobo | 2005-12-21 09:05 | 音楽

最近はアニメや読書の感想中心になっています。


by AppleTeaKobo